椋鳩十と動物物語
獣医学生が主人公の小説を読んでいて、『大造じいさんとガン』という本があることを知り取りよせた。動物が主人公の短編集で、著者は椋鳩十という人だった。 読んでいると、何かきれいな空気が胸の中にすーっと入ってくる感じがした。 この本には、十数編の短編の動物物語が含まれている。巻末の解説によると、このうちの5編は日中戦争が太平洋戦争に拡大した時代に書かれている。この本のタイトルになっている短編が『少年倶楽部』という雑誌に掲載されたのは、真珠湾攻撃の1ヵ月前であったとのこと。 「バンザイ、バンザイ」と、心で泣きながら若い人たちを戦争に送り出した時代、椋が伝えたかったのは、動物と人間の区別なく、いのちの尊さ、愛情の美しさだろう。動物物語に仮託した反戦の想いではなかったか。 タイトルの物語は、現在、小学5年生の教科書に載っているそうである。