小林稔侍とじゃがいも

最近は再放送のドラマでしか見かけることがなくなったが、小林稔侍という俳優さんがいる。「税務調査官 窓際太郎」や「駅弁刑事 神保徳之助」などのテレビドラマで、長い間、楽しませてもらった。地味で、ちょっとひょうきんで、けれんみがない演技に好感がもてた。それに少し弟にも似ていた。

いつのころからか、私はこの人に「ジャガイモ」というあだ名をつけていた。「今夜はジャガイモのドラマがある」とか、「ジャガイモが今度、映画に出るそうよ」というふうに。

少し以前に、たまたま、この人がTVインタビューで次のように話すのを見た。
若いころ、東映のオーディションを受け、合格した。同期で合格した人たちは、みな、男前で演技も映える人たちだった。そんななかで、自分は泥臭いじゃがいもでしかなかった。それなら、じゃがいもに徹しようと決心した。

胸を突かれる思いがした。彼は、ありのままの自分で演技をするという志を貫いておられたのだ。その志が、彼の演技から伝わってきていた。

ジャガイモさん、バンザイ!
 

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