カラスのねらい?

2週間ほど前のことになる。ガタンガタンの音で目が覚めた。私の住んでいるところでは、夜になると鹿やイノシシがうろつく。庭の木の若葉は、鹿の頭が届くところまで裸になる。地面は、イノシシがミミズでも探すためか、ボコボコと穴があいている。

私は2階で寝ている。鹿かイノシシでも来ているのだろう。そのうちに音も止むかとしばらく待ったが、いつまでも続く。懐中電灯で照らせば、逃げるだろうと思い、懐中電灯を手にカーテンを開けた。とたん、目の前からカラスが飛び立った。時計を見たら3時35分だった。薄明りになっていたが、まだ夜明け前である。

部屋の窓の外側には、落下防止のためか、幅30センチ、高さ30センチほどの柵が張り出ている。そこに、小さな赤いシクラメンの鉢を置いていた。直径10センチ位の小さなプラスチックの鉢で、陶器の受け皿にのせていた。カラスが飛び立ったあとを見ると、花の鉢はさかさまになっている。プラだから、音を立てたのはこちらではなく、受け皿の方である。この皿を持ち上げたり落としたりして、音を立てていたのだろう。

カラスは空き缶を転がしたり、くわえた小石を落としたりして、音を立てて遊ぶ。でも、薄明りのとき、いったい何をしに窓辺まで来たのだろう。音を立てるためだけなら、家の周りにいくらでも鉢や石がある。私をねらったのかしら。カラスは頭がよくて、巣をこわしたりすると、その人を憶えていて、攻撃してくると聞いたことがある。私はそんなことをした覚えはない。なぜだろう。

一つ、思いあたるのは、私は散歩しているとき、カラスの鳴き声を聞くと、真似をする。「カア、カア」に対しては、「カア、カア」。「カア、カア、カア、カア」とくれば、「カア、カア、カア、カア」といった具合に。(近くに人がいるときは、しないけれど。)とくに意図はない。どちらかというと、私はカラスが好きで、親しみみたいなものがあって、そうする。それを感じ取ったカラスがいたのだろうか。

そういえば、その2,3日あとも、こんな出来事があった。私は毎朝7時ごろ、ミサや朝の祈りのために家を出る。その日、家の玄関を開けた途端、「カア、カア」と聞こえた。鳴き声の方を見ると、目の前に広がる茶畑の向こう、ちょうど私の真向かいに立つ木のてっぺんにカラスがいた。私も「カア、カア」と返事した。

今朝もまた、同じことが起こった。

友達ができたようで、嬉しい。




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