シスターの置き土産

6月2日、シスターTが帰天した。若いころ、天草の修道院では、100人をこえる幼稚園の子どもたちの制服を縫った。東京の修道院に移ると、大勢の寄宿生たちのため食事を作った。裾野修道院でも、寄宿生のためのキチンで働いた。口下手で口数の少ない人だったけれど、骨身惜しまず働く人だった。足が弱ってきてからは、台所で椅子に座って、野菜の下準備とかをしていた。

シスターの楽しみの一つが、植木を育てることだった。大切にしていた植木に、月下美人がある。初夏の夜、暗くなると白い花が開き始め、いい香りを放つ。11時ごろに満開になり、朝にはしおれてしまう。彼女が体調を崩し、静岡県内の修道院から東京の病室に移ることになった時、月下美人の鉢4つほど、残していった。こちらの修道院のシスターが引き取って、世話を続けていた。

1ヵ月ほどまえ、「シスターTの病状が悪くなっています。お祈りください」という知らせが来た。そのころ、鉢の一つが蕾を付け、朝になると、赤い花が開いた。まだ花をつけたことがない月下美人だとばかり思っていた苗木が、初めて日中に花をつけ、それが赤いので、私たちはびっくりした。

シスターの葬儀が終わって2,3日して、また赤い花のつぼみが開いた。シスターが、「私は大丈夫だよ」と言ってくれているような気がする。







このブログの人気の投稿

共時性の不思議

心に残ること

存在する「マリア福音書」