カラスとのおつきあい

静岡県の私立中学校・高等学校のある敷地の一角に住んでいる。独立した図書館の建物もあって、度々お世話になる。司書の方が、図書館の玄関近く、入り口に向かって常駐しておられる。先日、その方から聞いた。カラスがほぼ毎日9時頃に入り口に来る。中には入ってこない。自分の座っているところから見えるので、「こんにちわ」と声をかける。カラスはしばらくその辺を行ったり来たり、玄関の外に置いてある机に飛び乗ったりして遊んで、そのうちに行ってしまう。

図書館を訪れるカラスと、私の部屋の窓までやってくるカラスが、同じカラスなのかどうか、わからない。ただ、私の住んでいるあたりに、人間を恐れないばかりでなく、親しげに近づいてくるカラスたちがいるのは確かだ。

そんなことを考えていて、思い出したことがある。もう10数年前のことになるが、学校の用務員さんの事務室のすぐ前で、カラスのひなが落ちていた。まだ立ち上がることもできない。そばの高い木の巣から落ちたらしい。鳥のひなが落っこちれば、そのままにしておくのが一番いいらしい。当時、私たちも用務員さんもそんなことを知らなかった。彼はそのひなを拾って、かごに入れ、落っこちてきた木の下に置き、すり餌を作っては、ひなを養った。木の上から親鳥がカーカーと鳴いていた。人が遠ざかると、かごの上にとまって、かごを突っついていた。その時のようすを私がよく知っているのは、毎日の散歩道の途中だったためである。

ひなが育って歩けるようになると、用務員さんはひなを屋内の作業場でかごから出し、飛ぶ練習をさせた。飛べるようになったのを確かめてから、彼はひなを外に放った。

用務員さんは、もう亡くなられた。カラスの寿命が何年なのか知らない。親しげに人間に近づいてくるカラスは、その時のひなやその一族だろうか。わからない。でも、私の住んでいるところでは、人間に親近感をもっているカラスたちがいる。こちらも親しみを感じる。

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