97歳の「定職」

97歳になるシスター。建物の中を行き来するには歩行器が必要だけれど、食堂の中とか短い距離は歩行器なしで歩ける。お皿に欲しいものを盛りつけ、自分の席まで運ぶ。その前に、歩くのがもっと不自由な人のために食べ物を席まで運んであげる。食事が終わると、キャスター付き小型のワゴンを押しながら、自分のテーブルばかりでなく、他のテーブルのお皿やお椀を集めて、洗い場まで運ぶ。

このシスターが体調を崩し、しばらく別の食堂で食事をすることになった。こちらではシスター自身も食事の介助を受けることができる。2,3週間ほどして、回復したシスターが私たちの食堂に戻ってきた。

食事が終わると、さっそくにワゴンを押し始めた。何人か心配した人たちが飛んできて、「ダメ、ダメ、ダメ」と止めようとした。「仕事を取られるのは、辛いよ」と、シスターの泣き声。できることは、なるだけ続ける方がいい、という院長判断で、汚れたお皿の回収はシスターの「定職」となった。

先日、私は補聴器購入のため病院に行った(購入費用は聖心会の援助による)。例のシスターは、3か月ごとの補聴器点検があるので、いっしょに行くことになった。病院で待っている間、車いすに乗っているシスターを見ると、スポンジ状のボールを両手に一つずつもって、にぎにぎを繰り返している。握力を保つためのリハビリなのだろう。

「負けた!」と思った。勝ち負けの問題ではないのだけれど、たとえ10年先に私が生きていたとしても、シスターのような気力は想像できない。

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