いっしょに歩く

終戦記念日が近くなって、ここのところ、新聞では戦争に関連する記事が多い。きのうは、フィリピンのキリノ元大統領についての記事があった。彼は妻子を日本兵に殺害されていた。にもかかわらず、戦後、日本軍のBC級戦犯に恩赦を出している。夕食のとき、私たちのテーブルでの話題は、もっぱらこのことについてだった。

私を打ちのめしたのは、日本人の行った行為の残虐さもあるけれど、自分がそれを全く知らぬまま、これまで何人ものフィリピン人のシスターたちと生活してきたという事実だった。

夕食後、廊下をいっしょに歩いていたシスターに、
「生きるって大変だね」と、思わずつぶやいていた。すると、
「ポンコがなに言うとるん。いっしょに歩いていこ」
と言われた。じんわりして、心がほぐれた。

こう言ったのは、今は年齢も干支もわからなくなっている人である。「家に帰る」に書いたとき、私はこの人を家まで送っているつもりだった。でも現実は、私も送ってもらっているのだ。


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