海軍さんの父
数々の重責を担ってきた人だけれど、現在、今日の日付がわからない人がいる。この人が繰り返し話す想い出がある。
「父は海軍さんだった。船に乗っているので、めったに家に帰ってくることがない。たまに帰ってくる日には、私と弟は門の前で待っていて、父の姿が見えると走って行き、父の片手に私、もう一方の手に弟がぶら下がって家に帰ってくるのよ」
お父さんはまもなく戦死。お母さんは早くに病死していて、その後、残されたおばあさんが二人の子ども達の世話をされたらしい。生活も大変だっただろう。幼い頃の幸せな思い出があって、よかったね、と思う一方、どう考えても戦争は残酷だ。
被爆者手帳をもつシスターは、「私たちは身寄りが一人もいないからね、仲がいいの」と言いながら、このシスターをあれこれと手助けする。