背中を押す神

遠藤周作の『落第坊主の履歴書』は、3-4頁の短文を集めた作品である。幼い頃のいたずらや悪童ぶりに、クスッと笑わせられながら読んでいた。本の半ば頃になって、突如「神の働き」というタイトルになり、びっくり。これも遠藤さんならでは、か。

かいつまむと内容は以下のようである。

神というのを二とおりに考えたいのです……。後ろのほうからいろんな人を通して、目に見えない力で私の人生を押して行って、今日この私があるのだということで分かったきたのです。後ろから背中を押しているのが神なのです……。そのように後ろから押しているものと私を存立させる場というものの二つがあって、それを考えかみしめていると、やっぱり神が働いているなという感じが私にはするのです……。

人生を歩むについてはたくさんの選択が可能であったのに、結局ここに来たわけで、これを私は選んでいるところを見ると、意思のほかに、他のものを選ばせない無意識のものあったのではないでしょうか。本能的にこっちのほうがいいなと思って選んでいるのであっても、本能的に選んだというのは何か理由があるわけで、理由を作ってくれたのはその場だと思うから、どうしても場とのつながりということを考えるようになりました。それを働きと言うのですが、私は働きを認めざるを得ないのです。

「背中を押してくれる神」というのは、すんなりと心に入ってくる。自分で選んできた人生と思っていたが、神が後ろから押してくださっていたというほうが、実感がある。


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