花束のプレゼント

きのう夕方、散歩に出かけた。いつもと同じ住宅街の裏道である。お店など一つもないこの通りに、一軒だけ花屋さんがある。2階建てのお店で、2階にはランの鉢とかバラなどの切り花が売っているらしい。花束を手に階段を下りてくる人を見かけたりする。

1階から2階にかけてを、うまくひな壇のようにしつらえ、花や植物が置いてある。小さな鉢からちょっとした高級なものもある。お店の前を通ると、花畑のような香りがする。散歩の途中、このお花畑の香りを楽しませてもらう。毎日のように通るから、お店のご主人と目礼を交わすこともある。

いつも夕方に散歩に行くのだが、お財布を持たないようにしている。500円前後で買えるものもあり、あれこれ欲しくなってしまうからである。一番誘惑になるのは、サービス・ブケ―のコーナーで、ちょっとした花束が550円で買える。

きのうも香りだけを楽しませてもらい、帰り道に着いた。するとすぐ前を歩いていた女の子が、クルリと振り返り、手に持っていた花束を私に差し出してきた。サービス・ブケ―にあったバラの花束が簡単な包装をされていた。金髪の巻き毛のその子は小学校高学年くらいか。「いいの?ありがとう」と言って受け取った。花束を手渡すと、その子は一言も話さず、回れ右をして、さっさと行ってしまった。

夕方だったけれど、朝からの一日がピカピカと輝くように感じた。バラはピンクというか桜の花びら色で、3本の枝に花とつぼみが10個ついていた。あの子はどんな気持で私にくれたのだろう。など考え始めたが、いやいや、喜んでいただくのが一番だろう、と自分に言い聞かせた。

今、バラたちは廊下の花瓶で満開である。




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