いんやく りおさん
修道院の本棚には、いろんな種類の本がある。修道院が購入したもの、個人が購入して読み終えて共用の本棚に入れたものなどなど。その本棚からなにげなく手に取ったのが、いんやくりおさんの本、というか、いんやくさんの言葉を彼のお母さんが書きとったものだった。タイトルは『自分をえらんで生まれてきたよ』である。
いんやくさんは、お母さんのお腹にいるときから不整脈があり、3歳でペースメーカーを埋めこみ、慢性肺疾患があり、10歳でカテーテルアブレーション術を受けている。上記の本は、彼の9歳までの言葉を拾っている。いくつも心に響く言葉があった。下記はその一つである。
神さまがくれたものは、たくさんある。
まず、心。気持ち。いのち。体。
それから、考える、頭。
ぼくは、神さまからのプレゼントなんだ。
だから、自分をたいせつにする。
自分をたいせつにすると、
地球へのおみやげに、なるんだよ。
彼の6歳の時の言葉とある。この本が出版されたのは2012年とあるから、10年あまり以前のことになる。今はどうしていらっしゃるのか、グーグルで検索してみた。
9歳の春、沖縄に移住している。沖縄で缶から三線に出会い、奏者として音楽活動をされているとのこと。「缶から三線(サンシン)」が何かも知らなかったので、調べた。
三線の胴はふつう木材であるが、その代わりに空き缶で作られている。戦後の沖縄で誕生した。当時の沖縄は物質不足で三線に用いる材料がなく、米軍から支給される食料の缶を胴体に、廃棄された木材を棹に、落下傘のヒモを絃にして三線を組み立てたそうだ。
病気を抱えるいんやくさんが、空き缶から作られた楽器の奏者として活躍されていること、すてきだと思う。「自分をたいせつにすると、地球へのおみやげに、なるんだよ」という彼に、「たしかにそうですね」と言いたい。