被爆の残像
――広島で原爆にあい、瓦礫のなかから、私の父は妻か3歳の長女のどちらかしか助けられなかった。妻を助ければ、また子どもが生まれることもあるだろうと、妻を選んだ。その後、二人の女の子が生まれた。それが私の姉たちです。二人とも膠原病でした。――
中3の時の教え子さんで、現在70代半ばの人から聞いた話である。長い間の付き合いがあったにもかかわらず、最近になって初めて聞いた。妻か長女を選ばなければならなかったお父さんは、どんなにつらかったことだろう。お父さんの心情も含めて、彼女にとって辛い記憶であろう。原爆は、今も人の心に痛みと悲しみを残している。