小鳥のことば
幸いにも私は自然に恵まれた地域に住んでいる。あたりに木々も多く、春にはウグイスのへたくそな「ケキョ」に始まり、数週間で「ホーホケキョ」に上達するまで聞かせてもらえる。初夏になれば、「トッキョキョカキョク」とホトトギスが鳴く。彼らの姿を見たことはないが、ヤマガラやシジュウカラは、庭の木に姿を見せてくれる。ヤマガラは人間になつきやすいらしく、私の手から麻の実を食べるようになった。ただ、野鳥の会の知人によると、餌付けをすると、小鳥が自然から餌をとる力を失わせるとのことで、すぐにやめた。
彼らにことばがあるとは、「小鳥の鳴き声にも『文法』」という新聞記事(8月31の朝日朝刊)を読むまで思ったことがなかった。動物行動学専門の鈴木俊貴さんという方の研究の結果についての記事だった。少し長い記事を以下に抜粋させていただいた。
小鳥のシジュウカラは鳴き声を複雑に使い分ける。ヘビなら「ジャージャー」、タカでは「ヒーヒー」。シジュウカラに、録音しておいた「ジャージャー」を聞かせてみると、地面を見たり茂みをのぞいたり、ヘビが潜む場所を探すかのようにふるまう。天敵であるモズのはく製を木の枝に置くと、逃げるのでなく、仲間を集めて追い払おうとする。その号令は「ピーツピ・ヂヂヂ」。「ピーツピ」は「警戒しろ」、「ヂヂヂ」は「集まれ」で、単独でも使われるが、これらを組み合わせて鳴く。その結果、仲間のシジュウカラは、モズを追い払うべく警戒態勢で集まってくる。「ヂヂヂ・ピーツピ」にすると、伝わらない。語順も重要である。シジュウカラの言葉がわかるのは、私だけではない。周りで暮らすスズメやメジロ、ヤマガラなどの鳥たちも、シジュウカラ語を学習し、理解している。
シジュウカラには感情、記憶力、判断力、行動力、仲間を思う心、などなどがあるのだ。私は、自然界には序列があって、人間はその頂点に立っているような気でいた。そうではなくて、みんな仲間なのだと気づかされた。